Fumiya Hiraoka presents / 2017


前作『Black & White(2015)』から一年二ヶ月。

この一年で考え方や、世界の感じ方が随分変わったなぁと思う。

2016年は活動を緩めて音楽以外の仕事や人間関係で充実させてみた。

本当に新鮮でかけがえのない経験ができたし、

忙しく入れ替わってたムラのある精神状態が気付いたら

めちゃくちゃ安定していた。


何より人にしろ環境にしろ

「どうにかしないといけない」状況なんか

ないんだって思えるようになった。


人間以外で「いま」に逆らって

がんばって」生きている生き物なんかいない。

植物も、動物も、微生物も、水も。

世界をあるがままに受け入れると、

何もかもが美しく感じられるようになる。

不足や欠乏からくる「変わらなければいけない」脅迫観念が

霧みたいに消えていく。

いま、ここに生物として欲しいものは全部ある。

体験したいことを体験してる。


正しさも誤りも

上も下も

昨日も明日も

豊かさも貧しさも

平和も争いも

拡大も縮小も

成功も失敗も

全部概念でしかない。


立場が変われば簡単にひっくり返る。

たしかなものなんて世界にはない。

ただ自分の心臓は脈打ってる。

息を吸うとなめらかに空気が入り込んで、肺がいっぱいに膨らむ。

この感覚だけはたしか。

いまに充分満足できれば、未来はもっと希望で満ちたものになる。



HOPE

2017年2月

平岡史也


1. hope (2017)


静かに見えていても本当は何もかもが調和しながら躍動してる。穏やかに佇んでいる人の体内では何十兆もの細胞が忙しく動き回ってるし、植物も光合成してるし、地球も猛スピードで回転してる。このアルバムの大きなテーマは「静」だけど、その中の「躍動」もしっかりと描きたかった。この曲も静かなバースから始まって、展開していく中で別々のリズムや音が混ざり合っていく。間奏からは雨や雷みたいな自然現象の音もサンプリングして入れた。歌詞はトルストイの小説「復活」をモチーフに。何不自由なく好き放題生きている貴族の青年が、昔にひどい仕打ちをした下女の娘と再会し「自分は何不自由なく暮らしているけど本当に俺はこんな人生でいいのか」と贖罪を通して目覚めていくというお話。苦しみながらも希望を求めて生きていく様は、どんな人間にも共通する生命の普遍的な部分だと思う。



2. Higher (2016)


このアルバムの象徴的な一曲。全てはこの曲から始まったし、一方でこの一曲だけで完結している感じもする。楽曲の序盤がまずアイディアとして生まれて、そこから肉付けをしていったんだけどこれがかなり難しかった。割と始めの40秒でおいしいところは全部出し切ってて(笑)、こんなもったりした曲を4分も間延びさせるなんて聴いている人が退屈してしまうと思ったから。なので慣例となっている「イントロ→1Aメロ→1Bメロ→1サビ, 2Aメロ→2Bメロ→2サビ, ブリッジ→大サビ」のテンプレートを変えることにした。最終的にはAメロや間奏をかなりグルービーにしたのと、2コーラス目を大胆に脱線させた。実験的に色んな冒険ができて楽しかった。ゴスペル調なので、歌詞もそれに寄せて賛美歌をテーマに。賛美歌は全部「神」に捧げる歌だけど、宗教色を抑えるために「人」に変えた。神だろうが人だろうが対象物は実は問題ではなく、当人が前向きに喜んで生きるためにどんな考えや価値観を選択するか、だけだと思う。ここでは、もう死んじゃった大切な人がどこかで自分を導いてくれてるんだ、という希望を一例として取り上げた。



3. Innocent (2016)


結婚する友人に宛てた曲。自分が表現し得る、最も純粋な愛を歌いたいと思って書き始めた。愛の純度が高まれば高まるほど、相手の持つ条件に意味は無くなっていく。顔が可愛いから、頭がいいから、優しいから、お金持ちだから、趣味が合うから、真面目だから、立派だから、自分のことを好いてくれてるから…etc。愛の最上形は、一人称でするものなんじゃないかと思う。「自分が」好きだと感じてるから、「自分が」強くなれるから、「自分が」前向きになれるから、「自分が」その人といて本当に安らぐし嬉しいから。だから優しくしたいし、可愛がってあげたいし、構いたいし、ずっと眺めていたい。「別に君は好きに生きていいよ、僕は邪魔をするつもりは無いし、ただ君が好きだから愛でていたいだけなんだ」ってこと。だからラブソングにもかかわらず、ほとんど「君」の描写が出てこない曲になった。余談だけどストーリーイメージはヨーロッパの片田舎で、徴兵されていく青年が出兵前夜に、村の幼馴染の女の子と小さな結婚式を挙げるという、スーパー妄想を基に書いた。友人を想って書いたわけじゃなくって、なんかほんとごめん。



4. Stranger (2017)


楽曲のメロディやアレンジなど音楽的な制作は全て二年前に完了していて、この度アルバムに収録するにあたって歌詞を書いた。音楽は当時流行ってたアデルとか、サムスミスとか、トムオデールとか、なんか暗い!重たい!悲しい!みたいな(笑)そういうサウンドをやりたいと思ったのがきっかけ。悲しくってメロディアスで強いラインが出来ていたので、歌詞もやはり強いテーマじゃないと負けちゃうよなぁと散々悩んだ結果「そうだ!不倫だ!」と名案がひらめく。でもただ不倫を「身体だけの関係で割り切ってるけど寂しい」みたいに書くのってやり尽くされてるし、「倫理的にいけないこと」っていう価値観を焼き直したって曲を書く意味がない。だから矛盾したテーマに思える「ピュアさ」を強調したものにしようと思った。本当に好きになった人が、たまたま相手のいる人だった。人を選んで恋に落ちられるわけじゃないから、その純粋で真っ直ぐな気持ちを表現したかった。だったら等身大の平岡史也のイメージで重ねて聴いてもらっても、違和感があんまりないんじゃないかなぁと。



5. Tonight (2010)


後半の二曲はアルバムのバランスを取るために収録された過去作品たち。これは恐らく二十歳になって書いたはじめの一曲だったと思う。もう、俺大人だしね!みたいな。歌詞の一文目で雨の描写があって、二文目で洗濯をしているという、なんともしっくりこない矛盾点があったりはするけど。『Stranger』から、どう逆立ちしても『涙』に繋がらなくって悩んでたところに登場した、クッション曲という名の救世主。ちなみにウチは乾燥機つきドラム式洗濯機なので、雨の日にまぁ洗濯することもある。(だから間違ってはない。)



6. 涙 (2013)


はじめの四曲が出来てくる中で、どうにもこうにもキャッチーな曲が無くってこれはヤバいな、と悩んだ結果この曲を収録。初音源の『First Kiss』を制作してる時に作った曲なので、胸キュン王子全開な仕上がりに。僕なりのキュンワードを散りばめた渾身のキュンソングなのでキュンキュンして下さい。